こんにちは。
最近は、職場が忙しすぎて体力を削られ、臨床研究に十分に取り組めていないジローです。
5月31日には、日本神経理学療法学会学術大会の抄録の締め切りがあり「抄録の登録できた!!」「当日はよろしくお願いします」ってtwitterが盛り上がっていましたね。
所属している日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)の学術集会も5月31日から6月1日まで、横浜で現地でも開催されていました。ぜひ現地参加したかったんですけどね。発表もしないのに現地まで行くのはコロナの関係もあり至難の業です。
学会での発表ごとにレベルアップを実感できるので、何とかペースを戻したいのですが・・・。
下半期は、私個人も頑張っていきます!
思いつきで臨床研究を始めると痛い目をみる
さて、これから来年の学会に向けて臨床研究を始めようと思っているあなた。勢いにまかせて研究を始めると痛い目にあいますよ。臨床研究を始めるには、人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンスに目を通したことはありますか?
これから行おうとしている研究が、以下の基本方針に抵触していないか何度も見返すことが必要です。基本方針をまとめたので順番に見ていきましょう。
1、社会的及び学術的意義を有する研究を実施すること
「社会的及び学術的意義を有する研究」とは、
健康の保持増進
疾病からの回復
生活の質向上
人類の健康及び福祉の発展
に広く貢献する研究のことを指す。
自分の興味関心事を解決するためだけに研究を計画・実施するのではなく、他者・社会への貢献を意識した臨床研究を行いましょう。
2、研究分野の特性に応じた科学的合理性を確保すること。
その分野において一般的に受け入れられた科学的原則に従う
科学的文献その他科学に関連する情報及び十分な実験に基づくこと
思いつきで臨床研究を始めではいけません。
先行研究をしっかり読み込み、過去の論文の批判的吟味をしましょう。
すでに実施されている研究に対して、新規性が無く再度後追いすることは避けましょう。
先行研究を参考にして、そのリサーチクエスチョンを解決するために最良の研究デザインを選びましょう。
3、研究により得られる利益及び研究対象者への負担その他の不利益を比較考量すること。
「利益」とは、
研究から得られる成果や期待される恩恵を指す。
研究対象者個人に健康上の利益が期待される場合には、研究対象者個人の利益となる。
研究成果は、社会的・学術的な価値という利益となる。
「不利益」とは、
研究の実施により生じる身体的・精神的な危害。研究が実施されたために被るおそれがある経済的・社会的な損害も含まれる。
研究の実施によるものか否かが不確定な危害の可能性も含まれる。
「比較考量」については、
研究対象者への負担並びに予測されるリスクを最小化し、 利益の最大化を可能な限り図ること。
負担・リスクの 総体を較考慮し、利益の総体が上回るよう考慮すること。
身体に与えられる危害だけでなく、精神的な危害や、経済的・社会的危害についても考慮しましょう。(例えば、辛い過去を思い出させるような質問紙の使用や、研究のフォローのために遠方から再々研究実施機関に赴く必要があるなど)。
研究実施のプロセスにあたっても、患者さんの利益を最優先に考えましょう。
4 、独立した公正な立場にある倫理審査委員会の審査を受けること。
多くの委員が多面的に審査してくれる倫理委員会を備えている職場ばかりではないと思います。しかし、この過程はスキップできません。
お金を支払えば審査してくれる倫理委員会もありますので、近くの大学病院のホームページから確認してみましょう。
研究チームに大学病院スタッフを入れることや、出身大学の教員に相談するのも良いでしょう。
5 、研究対象者への事前の十分な説明を行うとともに、自由な意思に基づく同意を得ること。
「自由な意思に基づく同意」とは
ヘルシンキ宣言第27を参考にする。
研究参加へのインフォームド・コンセントを求める場合、研究対象者等が研究者等に 依存した関係にあるか又は同意を強要されているおそれがあるかについて特別な注意を払うこと。
研究者は、将来の研究対象者となり得る一般の国民に対しても対話する機会を設け、国民及び社会の理解の推進を図っていくことが望ましい。
自分の受け持ち患者さんを、研究対象者に組み込む時には特に注意が必要です。撤回同意書の作成や、断りやすい雰囲気づくりをする必要があります。
研究対象者がインフォームド・コンセントを受けられない場合(未成年者または認知機能に障害のある対象者など)の場合には、代諾者による同意が必要です。一般的には、親権者、親族、後見人ですが、画一的に選定するのではなく、個々の研究対象者の状況、例えば、研究対象者とのパートナー関係や信頼関係等の精神的な共同関係のほか、研究対象者に対する虐待などの可能性がある場合は、研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者が選定されることが望ましいようです
6 、社会的に弱い立場にある者への特別な配慮をすること。
「社会的に弱い立場にある者」とは
判断能力が十分でない者
研究が実施されることに伴う利益又は実施されることを拒否した場合の不利益を予想することによって自発的な意思決定が不当に影響を受ける可能性がある者
を指します。
これも、自分の受け持ち患者さんを、研究対象者に組み込む時には特に注意が必要です。
説明時には、研究の不参加によって何ら不利益がないと説明しますが、それまでの関係性から断れない雰囲気を作らないように気をつけましょう。
7 、研究に利用する個人情報等を適切に管理すること。
この内容は、言うまでもないですが、
具体的には
患者の情報を匿名化すること(氏名、生年月日などの情報を抜き、患者IDと研究IDは分ける)。
研究データは、パスワードがかけられるPCで管理する。
対応表を作る場合は、対応表の保管方法にも留意する。
研究に不要な情報にはアクセスしない(後の研究のことを考えて多めに情報を取りすぎるなど)
研究終了後の一定期間を過ぎた場合(一般的に5年)に、研究データを削除する。破棄の方法も重要です(情報はコンピュータから専用ソフトを用いて完全抹消し、紙媒体(資料)はシュレッダーにて裁断し廃棄すなど)
細心の注意が必要です。もし漏洩した場合に、ニュースになってしまうこともあります。
8 、研究の質及び透明性を確保すること。
研究デザインに合わせたガイドラインを遵守することで、情報のヌケ・モレを防止できます。
まずは自己流にならずに、ガイドラインに沿って研究をすすめましょう。研究デザインに困った時は、疫学の人に相談するのも良いでしょう。
まとめ
盛んに臨床研究が行われるようになった一方で、倫理指針を意識しない臨床研究を計画したり、実施すると、後で痛い目をみる。
人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針ガイダンスを読み返すことで、倫理性の高く、安全で、質の高い臨床研究を実施できる。
厚生労働省のホームページに原文がある。時々改訂されるため、チェックしておく癖にしておく。
